君のいた時を愛して~ I Love You ~
サチはコータから届いたメールの時間と時計を何度も見比べた。
 コータには買い物を頼んでいたし、たまにお店の人と話をしたりして遅くなることはあったので、もう帰って来るだろう、今にも扉を開けて入ってくるだろうと、ずっと待っていたが、一時間経ってもコータは帰ってこなかった。
 明日の朝食用の食パンと、バーベキュー風味の肉の漬け込み用のヨーグルトを買って帰ってきてくれるはずなのに、コータは帰ってこなかった。
 心配でメールを三通も送ってみたが、返事も電話も来なかった。
「コータ、どうしちゃったの?」
 誰もいない部屋が、突然、恐ろしく広く感じられた。
 もし、このままコータが帰ってこなかったらと考えると、体が氷のように冷たくなっていった。
「コータ・・・・・・」
 何度名前を呼んでも、コータの優しい『どうした、サチ?』といういつもの声は帰ってこなかった。
 用意していた水炊き用の野菜が乾燥し、鍋に入れた昆布が干物から生きている海藻のようにみずみずしくなっても、コータは帰ってこなかった。
 二時間経ち、サチがコータの番号に電話をかけても、コータは電話にでなかった。
 サチはPHSを握りしめ、両膝を抱えるようにして毛布にくるまり、ただただ、コータの帰りを、コータからの連絡を待ち続けた。

☆☆☆

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