君のいた時を愛して~ I Love You ~
 サチは『過労』だなんてコータに伝えてしまったことを心の底から後悔していた。優しいコータの事だから、サチが過労で熱を出すほど大変な生活状態だと勘違いしたら、それこそ休みの日までどこかにバイトに行きかねない。
「コータが帰ってきたら、私が勝手にやったことで疲れただけだって伝えなくちゃ」
 サチはつぶやくと、コータに心配かけないように布団をしっかりとかけなおした。


 帰ってきたコータは、サチに解熱剤を渡すと、すぐに台所でお昼を作り始めた。
 一口のコンロしかないので、おかゆかなと思っていたサチの前に差し出されたのは、バターロールにレタスとソーセージが挟まれたホットドッグだった。
「えっ、これがお昼?」
 朝食は、パンで軽く済ませた二人だったから、そろそろ病人食かなと思っていたサチは思わず、小さなホットドッグを見つめた。
「あたし、てっきりおかゆかなって思ってたから・・・・・・」
「あ・・・・・・、ごめん、サチ。体力つけなくちゃって、肉とか食べたほうがいいと思って」
「ありがとう、コータ。風邪じゃないから、確かに、体力つけて早く元気になるね。いただきます」
 サチは言うと、可愛いホットドッグにかぶりついた。
 確かに、風邪ではないらしく、食欲がなくなっているわけでもないし、固形物を胃が受け付けないわけでもない。サチはコータが用意してくれた、可愛いホットドッグ二つぺろりと完食した。
「美味しかった~。コータ、ありがとう」
 サチが嬉しそうに言うと、コータも遅ればせながら自分の分のホットドッグに口をつけた。


 サチの熱は数日続いたが、ずっと仕事を休むこともできないので、コータは次の日から仕事に戻った。
 熱が下がるころには、サチが気にしていた足の痣も姿を消していた。
 そして、何事もなかったかのように、幸せな日々が再び始まった。
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