お嬢様、今夜も溺愛いたします。

「えっ、紗姫!?」


驚く私に、ニヤリと笑う。


「行ってみようぜ」


「はっ!?」


「黒木があの女となに話してるか、盗み聞きしようぜ」


「ぬ、盗み聞き!?」


さすがにそれはダメなんじゃ……


大事な話、してるかもだし……


「まあまあいいじゃん?
美都も、本当は気になるだろ?」


「うっ……そ、それは」


核心をつくその質問に、言葉が詰まる。

女子とはほとんど口を聞かない、会話しても一言で有名な黒木さんが、女の人とふたりきり。


そりゃあ、気にならないって言えば、嘘になるけど……


「じゃあ、行こう」


口ごもる私を、紗姫はそのままズルズルと引っ張っていく。


「ちょっ、紗姫!?」


「まあまあ、あんな人目につくところで話してる黒木が悪いってことで」


「えぇ………」


それはちょっと、無理がない?

てか、なんでそんなにワクワクしてるのよ紗姫は……


それからなんとか逃げようとする私を引っ張り、どこか楽しそうに紗姫はそこへと近づいていった。


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