お嬢様、今夜も溺愛いたします。
──────────


「この辺なら聞こえるだろ」


「もう……」


それから黒木さんたちのいる、すぐそばまでやってきた私たち。

近くにある木の影から、紗姫の後ろでその様子を伺う。


内心罪悪感はあるものの、その会話の内容が、本当はめちゃくちゃ気になる。


人として間違ってるし、

ダメだって分かってるけど、ごめんなさい黒木さん!!


全力で心の中で謝って、そっと耳を澄ませた。



「いいかげんにしてくれる?」


聞こえたのは、黒木さんの低い声。

びっくりするほど普段より、何倍もトーンが低い。

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