お嬢様、今夜も溺愛いたします。


「っ……どうしても、諦められなくて」


次は、女の人の声。


そっと木の影から覗いて、その人を見てため息が出そうになった。


めちゃくちゃ、綺麗な人……

界さんもすごかったけど、それを上回るほどの美人さん。


天使の輪が見えるほど、綺麗に染められたブラウンの髪。

洗練されていると分かるほど綺麗な顔は、ばっちりメイクが施してある。


「ケバい女……」


「ちょっ、紗姫……!!」


ぼそっと言った紗姫の口を慌てて塞ぐ。


なんてこと言うの!!

聞こえるって!!



「だから?」


黒木さんの声は、また一段と低くなる。


「何度言われようが、この先俺があんたに振り向くことは一生ない」


「で、でも……っ」


涙目になって、女の人は必死に引き留めようとする。


「じゃあ聞くけど。
俺の、何がいいの?」


「そ、それはもちろん……」


「どうせ、容姿しか見てないくせに」


「っ……」



言葉に詰まる女性は、きっと図星なんだろう。


別にこの女の人が悪いってわけじゃないけど……


何人ものお嬢様にスカウトされてた話もそうだし、中身も知らずに、容姿だけできゃーきゃー言われる人の気持ちは、一体どんなものなんだろう。

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