お嬢様、今夜も溺愛いたします。

「それと、あの時……」


「あ、あの時?」


「私が敬語を外し、お嬢様のことを、美都と呼びすてにした時。本当は、嬉しかったですか?」


ま、また美都って言った!!


それになんなの!?


この拷問のような質問は!?



黒木さんの顔は見えていないのに、まるで毒牙にかかったように答えそうになっていた。



「う、嬉しいもなにも、黒木さんだって、1人の大学生です!お友達といる時は、敬語なんて使いませんし、年下女子を呼び捨てなんて、普通のことじゃ………」



そう言いかけて、ふと胸の辺りがもやもやしていることに気づく。


別に私じゃなくたって、年下の女の子は山ほどいる。


呼び捨てなんて、日常的にしてるだろうし……



自分でも知らない、汚い感情が渦巻いてる気がしして嫌な気持ちになる。


「安心して下さい」


「えっ?」



どこか言い聞かせるような心地いい声は、



「私が呼び捨てで、下の名前を呼ぶ女性は、この世界で1人しかおりません」


「へっ?」


「もちろん、あなた様のことです。
お嬢様」



「…………」



私を常にドキドキさせてくる、強者。


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