お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「失礼致します」
どうぞ、と促され中に入ると、1人のおじいさんが長いテーブルの先に座っていた。
所謂、お誕生日席に。
イメージ的に、若い男の人かと思ってたけど、どっちかっていうと、貫禄があって、ダンディーなおじ様って感じ。
「…………」
ぎゅっと眉を寄せた顔で、鋭い眼差しを向けてくる。
ん?
なんかこの人、見覚えがある様な………
今日初めて会ったはずなのに。
不思議に思っていると、旦那様は私の前にゆっくり歩いてきた。
「お前が美都、か……?」
「は、はい」
ひたすら見つめられたと思ったら、出てきた言葉はその一言のみ。
「…………」
うー、なんか言ってよ……
こんなに近い距離で、しかも無言で見られるの、結構つらいんだけど……
いたたまれなくなって、視線を外そうとした時。
「会いた、かった……」
「え……?」
なに?
「会いたかったぞ、美都ぉぉぉー!!!」
「きゃっ!!」
すると旦那様は、みるみるうちに笑顔になった後、ガバッと私に抱きついてきた。