お嬢様、今夜も溺愛いたします。
なにごと!?
「美都……っ!!
美都っ!!」
「だ、旦那様!?」
未だ状況を掴めない私とは反対に、旦那様は何度も名前を呼んで、頬をスリスリしてくる。
「綺麗になったなぁ、美都!!
わしの娘そっくりじゃ」
「む、娘!?
それって……」
笑った時の、目尻が下がった砕けた表情。
初対面なのに、どこか安心するそのぬくもり。
まさか、この人……
ふと1つの考えが頭をよぎった時。
「可愛いのう、美都。
良かったら、このままわしの嫁に……」
今、とんでもなく恐ろしいワードが聞こえた気がするんですけど!?
「旦那様」
「うおっ!?」
パワーワードに驚き固まっていた私の腕を引き、よろける体を受け止めてくれたその人は、
「お嬢様が驚いていらっしゃいます。
まずは、ここがどこなのかということや、旦那様
のことをお話するべきでは」
さっきのコスプレイケメン。
どうやらずっと私の後ろに控えていたらしい。
「ふん。
そんなこと、言われなくとも分かっておる。
美都、こちらへおいで」
ん?
なにこのピリッとした空気……
コスプレイケメンはすまし顔なのに、どこか不機嫌な様子で旦那様を見ていて。
一方で、旦那様も私にはとても優しい眼差しを向けていたのに、コスプレイケメンに対しては睨んでいるように見えた。