お嬢様、今夜も溺愛いたします。

「そうだよ。
お前の母はわしの娘。正真正銘、わしはお前の祖父じゃ」


「………」


やばい。

言われてる内容は耳に入ってきてるはずなのに、理解が全然追いついてない。


「で、でも私におじいちゃ……いえ、旦那様がおられることは聞いた事ないのですが……」


なんとか慌てて言い直せば、旦那様は目を細めてこれでもかと言うくらい、優しく笑う。


あ、やっぱり。

この笑った顔、お母さんに似てる……


さっきこの表情を見た時に思ったことは、間違いじゃなかったんだ……


「っ……」


途端に目元が熱くなって、何かがグッと喉の奥から込み上げてくる。


ずっと………

ずっとずっと我慢していたもの。



「美都」


優しい目で、いつもニコニコ笑って頭を撫でてくれた、大好きなお母さん。


どんなに仕事が忙しくても、眠そうでも、いつもあたたかい手でぎゅっと手を握ってくれたお母さん。


悲しい時、つらい時はそっと背中をさすってくれて、抱きしめてくれたお母さん。


「わしはお前の祖父なんだから、おじいちゃんと呼んでくれて構わんよ。美里と圭人さんが亡くなって、美都が1人になってしまった話を聞いて、急いで部下を美都の元へ寄越したんじゃ。悪かったのう、1人にさせてしまって。これからはここで暮らすといい。おじいちゃんと……美都?」


「お嬢様?」


霞んで歪む視界の中、2人が驚き、言葉を失っているのが分かる。



そりゃあ、そうだよね。

急に泣き出すんだもん。


だって、もう我慢できなかった。

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