お嬢様、今夜も溺愛いたします。
──────────


「落ち着いたか?」


「うん。
ごめんね、急に泣いたりして」


「いいんじゃよ。つらい時は泣いていい。我慢することなんか何もない」


背中に回っていた腕が離れて、頭をポンポンとなでられて。


俯いていた顔を上げれば、おじいちゃんは目尻を下げて、今にも泣きそうな顔で微笑んでいた。


「おじい、ちゃん……?」


その顔に、またとまった涙がぶり返しそうで。

胸の奥がぎゅっと締め付けられた。


「1人にしてしまって、悪かった。仕事が忙しくて葬式にも出られず、こうやって溜め込むまで我慢させたこと」


「そんなことないよ。おじいちゃんのことは今まで聞いてなかったから、てっきりいないとばかり思ってたし」


指で拭われた目元がくすぐったくて、ふふっと笑えば、おじいちゃんは何とも言えなさそうに苦笑いした。


「うちは江戸時代から受け継がれてきた会社でな。元々は、有名な武将の支援も行っていたくらい、大きい会社なんだ」


「えっ、江戸!?
しかも武将って……」


ななんかとんでもない事実が判明したような?


ってことは、相当大きい会社ってことよね?


江戸時代から続いていて、有名な武将への支援……


普通に考えてやばすぎでしょ!!


思わず涙も引っ込んでしまうくらいの衝撃。


そして、おじいちゃんはいたずらっ子みたいにニヤリと笑って続ける。


「美都も知ってる人……というより、知らない人はいないんじゃないかってくらい、有名な人だよ」


「ええっ!?」


まさか、あの人!?

いや、あの人の可能性も……


そ、そりゃあここまでの広い敷地とか、お屋敷だとか。

言われてみれば確かに頷ける。


そんな人の孫だなんて……


まるで夢を見ているようで、未だに信じられない。
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