お嬢様、今夜も溺愛いたします。

「とんでもない資産家だってことは十分分かったけど……それとおじいちゃんのことを話さなかった理由は、何か関係があるの?」


今まで生きてきて、おじいちゃんがいることや資産家だってことは1度たりとも聞いたことない。

だからお葬式だって、他に親戚もいないと思ったから、できる限り1人で終わらせたし。


「さっきも言った通り、美里……お前の母は、わしの娘。だが、一緒に住んでいたのは美里が小さい頃までだったんじゃ」


「小さい頃……?」


「そうじゃ。資産家だとか、社長の娘だからって、金目的で近づいてくる変な輩が昔から後を絶たなくてな?危ない目に遭ったのも、数え切れんほど」


「…………」


そういうことか。


つまり、お母さんは父親が会社の社長で、お金持ち。

それが世間に知られることによって、危険もたくさんあったってこと。


「それもあって、わしの妻……お前の祖母にあたる美里の母も、心労で病気になって亡くなってしまった。それからは、美里はこの屋敷に住まずに、お仕えの執事やメイドたちと、ひっそり暮らし始めたんじゃよ」


「そう、だったんだ……」


「お前にわしのことを話さなかったのも、きっとそのため。お前が危ない目に遭わないようにするためじゃ」


お母さん……


その優しさに、胸がじんわりとあたたかくなる。


私の、ために……


父親であるおじいちゃんと会えなくて寂しかったはずなのに、私のことを思って……
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