お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「まあ、離れて住むと言っても、ほぼ毎日のように会いに行っていたから、お互い寂しいなんてことはなかったよ。それに、会社のことは気にせず、美里には美里の人生を歩んで欲しいと思っていたから、逆に良かったと思っておるし」
「そっか……」
私を安心させるかのように、優しい声で言葉を紡ぐおじいちゃん。
「それに、お前とも何度も会っておったよ」
「え!?」
うそ?
全然覚えてない!!
「まあ、まだ5歳ぐらいだったからなぁ。
大きくなるにつれて、会わない方がいいと美里にも言われておったし」
クスクス笑ってはいるけど、どこか落ち込み気味のおじいちゃん。
だって、本当に覚えてないんだもん!!
小さい頃の記憶なんて、覚えてない人がほとんどだと思うし!!
「でも、すべては大事なお前を守るためにしたこと。気にするな」
「ありがとう、おじいちゃん……」
そう言うと、おじいちゃんは嬉しそうに目を細めて笑って。
私も、ついさっきまでの暗い気持ちはいつの間にかなくなっていた。
「それでだな、美都。お前にはもう二度と寂しい思いはして欲しくない。だから、今日からここに住むといい」
「えっ……ええっ!?
ここで!?」
昨日まで普通の一軒家に住んでいたのに、今日からはこんなお屋敷に!?
「いやいやいや、おじいちゃん!!
気持ちは嬉しいけど、私は今まで通りで十分。お花屋さんはさすがに続けられないけど、こんな豪華な所に住むなんて、気が引けるっていうか……」
正直、落ち着かないっていうか……
「美都はなーんも気にしなくていいよ。なんせ、わしの孫だからな。必要なものや欲しいものがあれば何でも言ってくれ。おじいちゃんが全て用意する」
「で、でもっ……!」
渋る私に、おじいちゃんは腕を組んで、ニコニコ笑うだけ。
「美都にはつらい思いをさせた分、存分に甘やかしたいんじゃ」
「おじいちゃ……」
やばい。
また目がうるうるして……
「それにだな、孫と暮らすのがわしの夢だったんじゃ。しかもこんなに可愛い孫を1人で置いとくなど、わしの心臓が持たん」
なかったわ。
「えぇ………」
そこなの!?
真の目的はそっちなの!?
急に真顔になったかと思うと、なぜか頬を緩めてニヤニヤ。
さっきのしんみりとした空気どこ行った?
嬉しいよ?
それはもう、この上ないほど嬉しいよ?
でもだからって、そこまで心配してくれなくても……
お母さんの場合はまだ小さかったからあれだけど、私もう高2だよ?
子供じゃないんだよ?