お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「じゃあ、美都。
後のことは黒木から聞いてくれ。わしはもう仕事に行かねばならん。本当なら、今日はずっと一緒にいたかったんだが……」
シュンと眉を下げて落ち込むおじいちゃん。
ふふっ、可愛いなぁ。
こうやって見ると、社長っていうより普通のおじいちゃんにしか見えない。
「大丈夫だよ、おじいちゃん。
本当に、色々ありがとう。仕事なんだし、気をつけて行ってきてね。時間がある時は、一緒にご飯食べようね」
「み、みとぉぉーーっ!!」
安心させるつもりで笑顔で言ったのに、おじいちゃんはみるみるうちに頬を緩めて抱きついてこようとする。
「ちょっ、おじいちゃん……っ!?」
「では旦那様、お気をつけて行ってらっしゃいませ。無事のお帰りを、お待ちしております」
「なっ!?」
スパンっ!!とそれを遮るかのように、コスプレイケメンは私を抱き上げたまま、スタスタと部屋を出ていく。
「こら待て、くろきぃぃぃーーーっ!!」
「えっ!?」
後ろから怒号のようなものが聞こえてビクッとしたけど、コスプレイケメンは一切振り返ることなく、一礼をして部屋を出たのだった。