お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「だけどな、十夜。
美都を泣かせたりしたら、許さんからな」
ぶっきらぼうに。
でもどこか笑みが零れるおじいちゃんに、十夜さんはふっと笑って告げる。
「それはちょっと無理な話ですね」
「は?」
「私も1人の男です。
今まで散々焦らされてきましたから」
ぎゅっと指を絡められて、愛おしくてたまらないという目が私を見つめる。
「おい。
卒業するまでは許さんぞ」
「承諾しかねます」
「おい、十夜っ!!」
「なんて。
分かってますよ、そんなことは。
それよりも私は隣で美都様が笑ってくれるだけで十分幸せですから」
何やら不穏な空気が漂い始めたところでの十夜さんの発言。
怒り狂いそうになっていたおじいちゃんも、ヤレヤレとため息をつく。
「美都のこと、よろしく頼むぞ十夜」
「はい」
「美都も。
まだだいぶ早いが、幸せになるんじゃぞ」
「はい……っ!!」
頷くとおじいちゃんはとびきりの笑顔で笑ってくれた。
「幸せにします、お嬢様」
穏やかな空気が流れる中、十夜さんは目を細めて優しい表情で微笑んだ。
「私だって十夜さんを幸せにしますから!」
そう言えばまた、十夜さんはこれ以上にないほど幸せだと言って私を抱きしめた。