お嬢様、今夜も溺愛いたします。


「お気に召されましたか?」

「はい。とっても……」


ゆっくり上体を起こして、私から退いた黒木さん。


「ここは、旦那様と美里様の、お気に入りの場所だったそうですよ」


「お母さんと、おじいちゃんの……?」

「はい」


お母さんが小さい頃、おじいちゃんと住んでいたこのお屋敷で、2人はよくここへ足を運んでいたんだって。


「昔から、美里様も旦那様も、草花がお好きで。その影響もあってか、花屋を経営されておられた圭人様との出会いは、運命に感じられたようです」


「そう、だったんだ……」


毎日仕事が忙しくてお父さんを手伝えなくても、休みの日には必ず、お店にあるお花の手入れは欠かさずしていたお母さん。


「お母さんもお父さんも、おじいちゃんも。みんな、私と同じように、お花が好きだったんですね……」


そよそよと流れていく風に、月明かりとキャンドルに照らされた花々が揺れている。


とても心地よさそうに揺れるその花は、私の心をあったかい気持ちにさせてくれた。

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