お嬢様、今夜も溺愛いたします。
プンプンと怒る私に、黒木さんは笑うだけ。
こっちはめちゃくちゃ気にしてるっていうのに。
「まあ、でも……」
「ん?」
屋上庭園を出て、エレベーターに乗った途端。
「お嬢様の体に私の服の香りがついているのは、なかなか興奮するものですね」
こ、興奮!?
変態だ!!
やっぱりおかしいってこの人!!
唇に人差し指をあて、ニヤッと不敵に笑う。
「動揺しまくりですね」
「当たり前じゃないですか!!」
「顔も赤いですし」
「これは黒木さんのせいですっ!」
「本当のことを言ったまでです。
私は常に、お嬢様に欲情し………」
「それ以上言ったら怒りますからっ!」
ポーンとタイミングよく、私のお部屋のある階に到着したことを知らせる音が鳴る。
そしてエレベーターが開いた直後、全速力で駆け出した。
もちろん、クールな顔してとんでもないことを言う男から逃げるために。
「お待ち下さい、お嬢様!!」
「待つわけないじゃないですか!!」
やばい。
後ろで吹き出す音がする。
めちゃくちゃ笑ってるし、ほんと私といる時コロコロ表情変わるよね。
黒木さんってもう1人いるんですかと何度も聞きたくなる。
「じゃあ、おやすみなさい!!」
振り向かずにそれだけ言ってまた走り出そうとすれば。
「お嬢様!!
良かったらご入浴されるの、お手伝いして……」
口端を上げて明らかからかうように言うもんだから。
「いらない!!
てゆーか、入ってくるな!この変態執事!!」
恥ずかしいのと熱くて心臓も頭もパンクしそうで、さすがの私も敬語なしに言い放った。