お嬢様、今夜も溺愛いたします。
──────────


「それで?
宣言したあの目的は、達成できたのか?」


「いや、まったくです………」


甘えると決めた日から数日。

私は学校の机に突っ伏して、ズーンと落ち込んでいた。


甘える、というより黒木さんが何かと気にかけてくるから、なかなか思うようにいかない。


というか、ことごとくかわされてるような……


「お勉強ですね、お嬢様。
苦手な教科にもしっかり取り組まれててとてもえらいですよ」


とか。


「今日のお食事は、お嬢様の大好きなものばかりでございます。ぜひたくさん、召し上がって下さいませ」


とか。


執事とお嬢様の関係のはずなのに、子供扱い?されてるようにしか感じない。


そんな中で、自分から甘えるなんてしたら絶対………


「お嬢様は、小さい子供となんらお変わりありませんね」


などと毒を吐くに違いない。


いつも何かと気にかけてくれたり、お世話してくれる黒木さんだけど、


この間の変態発言だとか、耳にキスしてきたりだとか。

たまーに、ああやって意地悪を言ったりするから、

普通の男の人ってことを実感させられてしまう。


「なかなかうまくいってないみたいだな」


「そういうこと」


苦笑いする紗姫に、私は落ち込むばかり。


今までしてこなかったことを実行するのって、こんなに難しいことなのね………
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