片思い終着駅
3階に上がり、現代小説のコーナーへと向かった。
そこには嗅いだことのある、いい香りがただよっていた。
一歩ずつ奥へ進むと、
「永田先輩?」
1ヶ月も大学に来てなかった永田先輩がいた。
入学式の時に黒かった髪が、今はほんのり茶色に染まっていて、綺麗なウェーブがかかっていた。
「おぅ。久しぶり。」
そう微笑んだ先輩は、いつも以上にかっこよくて輝いていた。
女の子が騒がないわけがない。
「永田先輩、あの日から大学に来てないから、辞めちゃったのかと思いました。」
そう言うと、先輩は
「俺、“先輩”じゃあないんだよね。」
と頭をかきながら笑ってみせた。
その姿さえも絵になる。
「えっ?入学式の時、サークル歓迎していた男の人、先輩のこと知ってたから、てっきり歳上なのかと…!」
あたふたするわたしを見て、ぷっと吹き出した先輩。
「俺のことなんにも知らないんだね。まぁ、おれも君のこと、なんにも知らないんだけどさ。」
「そりゃあ、初めてお会いしたんですから、何も知りませんよ!」
不思議なことを言う先輩だなぁ。