冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「夕食をお持ちしました」


警戒心を剥き出しにして、その言葉には答えず、静かに従者が鉄格子に掛けられた南京錠を開けるのを待った。

先ほど私が逃げ出そうとしていたのを悟られていないだろうかと、落ち着かない気持ちでうつむいていると、頭上から影が伸びて来た。


「――っ!」


顔を上げるのとほぼ同時に口元を大きな手で塞がれて、殺される、と思い私は身を固くした。叫び声を上げたくても、恐怖で喉の奥が閉じてしまい、引きつった呼吸音だけが響いた。


「静かにしろ。俺だ」


聞きなれた低い声が耳元で響いて、私は息を呑んだ。


「エリオット……」


声の主がエリオット王子だと脳が認識した途端、身体中から力が抜ける。

膝から崩れ落ちそうになる私を、エリオット王子はよろけることもなく片手で軽々と受け止めた。


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