冷徹王子と成り代わり花嫁契約

『ご安心下さい。ロゼッタ様は、王室の者が一丸となって必ずお守りします』


そこで会話は途切れて、私達と対になる位置に立っていた少年が、両陛下に向かって恭しく一礼をした。


『エリオット。必ず二人を守れるように、強くなりなさい』

『はい』


艶やかな黒髪を揺らす少年のそばに控えていた従者が、少年の手を取り、その人差し指にナイフを押し当てた。

小さな指先から、赤い宝石のようなものが生み出される――エリオット王子の、血だ。

それに倣う形で、幼い頃の私の手を取っていた女性も、恭しく一礼をして、私の指先にナイフをあてがった。


『っ……』


ピリッと鋭い痛みが神経を駆け巡って、エリオット王子と同じように、僅かに切られた指先から一滴分の血が晒された。


『この封印は、エリオット・ファーガソン及びイリヤ・アシュフォードの血によって施されます』


両陛下の前に立つ、男なのか女なのか区別のつかない顔立ちと声を持つ、長い銀髪を揺らす人がそう声を張り上げ、長い杖を掲げた。

その先はくり抜かれた月のような形の物がつけられ、光の加減で七色に色を変える水晶がいくつもぶら下がっている。


『封印を解くには、封印を施す時と同じく、二人の血が必要となります。その時まで、お忘れなきよう』


中性的なその人が杖を掲げると、それに引き寄せられるようにして、私の指先から血の真珠が浮かび上がった。

それが、銀髪のその人の手にある赤い本に吸収され――眩い光が全てを覆い尽くしたのだった。


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