冷徹王子と成り代わり花嫁契約


「貿易の関係で隣国とはそれなりに交流がありますので、時々隣国の王族の方がお越しになります」


ヴァローナが言うには、今日はたまたま、手の空いていた王子が交流のためにこちらに来るということのようだ。

従者がそばについて、肩身の狭いオペラ鑑賞をするよりは自由な時間を過ごせる方が、有り難い。

ここ最近はほとんど、勉強ばかりしていたから。


「そろそろティータイムのお時間です」

「はあい」


時間きっちり、壁に掛けられた時計が低い音で、ティータイムを告げた。

私に向かって一礼して、ヴァローナはお茶の準備をするために扉の方へ歩みを進めた。


「くれぐれも、外出はなさらないように」


扉のノブに手をかけたまま一度立ち止まったヴァローナは、念の為と言うよりは、お前ならやりかねないといった複雑そうな表情で振り向いて、私に向かってそう言ったのだった。



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