冷徹王子と成り代わり花嫁契約

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一人きりのティータイムが終わり、ヴァローナは別の仕事で外出するとの事だった。

彼はカラスのような漆黒の外套を身に纏い、外出をする前に私の部屋に訪問して来たのだった。

心配そうな顔で「しつこいようですが、外出はなさらないようにお願いします。お部屋から出るのも、急用がなければ避けて下さいませ」と、再度釘を刺された。

私は聖書を片手に軽い返事をして、ヴァローナを送り出した。


「要するに、危険なことをしなければいいのよね?」


ヴァローナの言葉を都合良く解釈した私は、彼が居なくなってから程なくして、部屋の扉を押し開けた。

行く先は一つ。
この王宮の南側にある薔薇園だ。

私が初めてここに来た時、メイド長と薔薇の手入れをした。そして、妹と初めて顔を合わせた場所でもあった。


少し肌寒くなってきた今の時期だと、薔薇の種類によっては休眠してしまっているだろうが……あの圧巻の光景を、この目でもう一度見てみたかったのだ。


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