冷徹王子と成り代わり花嫁契約
六章 監獄のプリンス

この間はすっかり邪魔が入ってしまい、堪能できなかった薔薇園にもう一度足を踏み入れた、よく晴れた日の昼下がりのことだった。


「やあ。また会ったね」


風になびく見覚えのある銀髪と、爽やかな笑顔に私はため息をつきたい気持ちになった。


「ごきげんよう、クリストフ王子」


エリオット王子と気まずくなってしまってから、彼と顔を合わせてない。公務や稽古で忙しいらしく、部屋を訪ねてもいつも不在なのだ。

ここまで来ると、意図的に避けられているような気もする。
それなのに、エリオット王子より先に再びこの男と会うことになるなんて。


「エリオット王子なら、公務で城にはいないわよ」


庭師から借りたジョウロを傾けたまま、私はクリストフ王子に目もくれずに、努めてそっけなく答えた。

鉄製のジョウロの先からゆっくりと出てくる水をじっと眺めていると、ジョウロを持っている手に温かいものが重ねられたことに気が付いて、私は顔を上げた。


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