プロポーズは突然に。
「さぁ、お乗りください」
日下さんはいつものように柔らかく微笑んでいるけれど、今は一人になりたい。
たくさん考えたいことがある。
たくさん解決しないといけないこともある。
だから…一人の時間が欲しい。
「…すみません、歩いて帰るのでいいです」
「それは困ります。奥様に夜道を歩かせたなんて聡様が知ったらどれほどお怒りになるか…」
「大袈裟ですよ。たった10分ですし大丈夫ですから」
「しかし…」
「贅沢な暮らしに慣れてない私にはこういうの息が詰まるんです。放っといて下さい。それじゃ」
「…」
日下さんに頭を下げ、通り過ぎるようにその場を去る。
寒い中、待っていてくれた日下さんには申し訳ないけれどハッキリ言っておかないといつまでもこのままだ。
私は普通の庶民でただの美容師。送迎なんて贅沢なことしてもらえる身分じゃないんだから。