プロポーズは突然に。
『俺は…おまえを守りたい』
彼女の前に立った俺は、自然とそんな言葉を紡いでいた。
きっと俺のことは覚えてないだろう。
辛かった“あの日”は消し去っているはずだから。
ただ彼女を救いたいと思った。
下手くそにしか笑えない彼女を思いきり笑わせて、
涙を流すこともできないほどに凍ってしまった心を溶かして…
興味本意でも、同情でもなく本気でそう思ったんだ。
背筋を伸ばし、気丈に、そして涙一つ流さずに真っ直ぐ前だけを向いていた彼女はとても凛としていたけど、
何かを堪えるように下唇を噛み締め続ける彼女は本当はすごく脆いのだろう。
育った環境の所為で感情を表に出すことすらできない彼女を守りたいと心の底から思った。
でも…彼女に俺の声は届かない。
色のない瞳で遠くを見ていた彼女は、何も答えることなく俺の横を通り過ぎ、そのままどこかへ行ってしまった。
―――また…何もできなかった。
無理矢理にでも連れ出せばよかった。
強引にでも彼女の心の中に入ればよかった。
再び押し寄せた後悔の念に押し潰されていた。