プロポーズは突然に。
「じゃあ賭けよう。俺が今から最高速度の球でホームランを打つ。それも一発でな。それに成功すればおまえは黙って婚姻届にサインするってことで」
「…バッティングセンターに来たことあるんですか?」
「いや、こんな場所があることすら知らなかった」
「失礼ですけど、野球の経験は?」
「ない。父は英才教育に熱心でスポーツなんてやらせてもらえなかった」
素人が200キロの球を一発でホームラン…無謀だ。
「もし失敗すれば結婚はなし、仕事の契約は継続ということでいいんですか?」
「そうだな。そうしよう」
無謀だけど…この賭け、私にとっては好都合かもしれない。
明日から余計なことで悩まなくて済むんだから。
「じゃあ…それでお願いします」
「よし、決まりだな」
彼は自信に溢れた笑みを見せると高価なスーツの上着を脱ぎ、ワイシャツの袖を捲る。
打席に入ってバットを持ち、バッターボックスに立つ彼の顔は真剣そのものだった。
いくらなんでも、初めてでホームランなんて…