秘密の恋は1年後
「まひる、絶対誰にも話しちゃダメよ」
「うん」
姉の言う絶対は、なにがあっても守る。
そうやって、私たちは姉妹しか知らない秘密をたくさん共有してきたのだから。
「井浦社長、今の秘書の沢村さんとお付き合いしてるみたいなの」
「……えっ!?」
「それで、私は失恋を受け入れた上で、彼に仕えなくてはいけないの。こんな異動なんて受けたくないわよ……。マスター、生! あとマルゲリータピザと自家製ローストビーフも!」
口火を切ったように、彼女は嘆いた勢いで追加注文をする。
「待って! 美桜ちゃん、井浦社長が好きなの?」
「そうよ。入社してからずっとね」
大粒の涙をこぼしながら、やるせなさを浮かべた笑みがとても悲しそうで……こんな姉を初めて見た。
潔く話すけれど、頬を伝う涙は切ない。
そんな彼女を前にしたら、私も秘密を打ち明けたくなった。
「実は、私もね」
「ん?」
「……千堂副社長が好きなの」
唐突な告白に不意を突かれた彼女は、すっかり涙を止めて私を凝視していた。