秘密の恋は1年後
「まひるだから話すけど、こんなにつらい人事異動は社会人になって初めてなの」
「……大変そうだもんね。今だって忙しいの、私は分かってるよ」
「多忙なのはみんな一緒よ。任されている仕事が違うだけで、社の人間は志をひとつにして、目標を掲げて頑張らなくちゃいけないんだから、それは気にしていないの」
「じゃあ、なに?」
仕事が好きすぎて、モテるくせにこの数年恋人がいない彼女が弱音を吐くのは初めてだ。
社長秘書になって多忙を極めるからと、別れを選ぶような相手もいないだろうし、困ったら仕事と結婚するとまで言っていたのに。
「井浦社長、結婚を決めている相手がいるんですって」
「……そうなんだ」
井浦社長ほどの人なら、そういう相手がいても不思議ではない。上品で紳士的で、仕事もできて経済力もある、そんな男性には良縁があるものだと思う。