秘密の恋は1年後

「あ、社長! どちらにいらしてたんですか!?」
「アルパカのところ」

 社長室に戻るなり、秘書の沢村さんが飛び込んできた。


「朝のうちに会議資料にお目通しをお願いしたじゃないですか!」
「これからでも間に合うから大丈夫。あと、今日の予定だけど変更なしでお願いね。今日は早めに帰りたいと思ってるから」
「かしこまりました」

 沢村さんに初めて会ったのは、前任の井浦社長の秘書に抜擢された時だった。あの頃は営業部から突然秘書の仕事を任されて、泣きそうな顔をしてる日もあったけど、今となっては敏腕秘書か。

 あれから、俺はなにか変わっただろうか。
 社長職に就き、日々慌ただしくはしているくらいで、これといって大きな変化はない。
 まひると付き合うようになって、自分らしくなく感情を振り回されているような気がするけれど。

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