秘密の恋は1年後
「尚斗さんにお話ししたいことがあります」
前置きをして、きちんと聞いてもらおうとしたのに、今度は彼の方が息をのんだような顔をした。
「私、自信がないんです。尚斗さんの恋人になった現実は頭でわかってても、気持ちと自己評価が追い付いてくれなくて……。私は取り柄もないし、本当に普通で、もっともっと素敵な女性はたくさんいるのにって思ったりもして」
一気に話しだした私を黙って見つめる彼から、視線を逸らす。
彼にはよく似合うこの住まいも、私には贅沢の限りを尽くしたようで別世界だと思った。
一緒にいればいるほど、もっと相応しい女性になりたいと思うようになったのが本音なのだ。
「だから、これからもっと頑張らないといけないことばかりで」
そこまで話したら、彼は深いため息をついて眼差しに切なさを纏わせた。