秘密の恋は1年後

「お前、大切なこと忘れてるな」

 考えていると、彼はそんな私の様子にもう一度ため息をつく。


「まひるを選んだのは他でもない俺だってことだよ」
「それでも、私は相応しくないと思うんです」
「俺とお前の間に線を引いて考えるな。そもそも、今のお前がいいと思ってるから付き合ってんのに」

 今の私を受け入れてもらえていると言葉にしてくれて、心が軽くなった。
 彼がおもむろにポニーテールにしていた髪に触れ、遊ぶようにしている。そして、背を反らした私のうなじに大きな手を添えた。


「でも、お前が頑張りたいなら勝手にしろ」
「えっ?」

 きょとんとする私の心の隙間を、ふっと笑った彼の優しい微笑みが埋めていく。


「手始めに、俺の身の回りの世話をさせてやる」

 抱きしめてくれる彼の腕の強さや温もりが愛しくて、涙が出そうになるのをぐっとこらえた。
 不安で仕方なかった気持ちを、彼がまるごと包み込んでくれる優しさに甘えてばかりじゃダメだもの……。


「お前がしてくれるんだろ?」

 耳元で囁く彼は、やっぱりちょっと意地悪で強引だけど、私は素直に頷いていた。

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