秘密の恋は1年後
「尚斗さんって、実は優しいですよね」
「別に、普通だろ」
例に漏れず素直じゃない返事が返された。
でも、私の脳内で翻訳すれば、私に優しくすることは特別じゃないという意味に取れて、どうにも頬が緩んでしまった。
公園内の自由広場で、木陰を選んでレジャーシートを敷いた。四隅に彼の靴と私のサンダルを置いて押さえ、バスケットを真ん中に置いて横たわる。
「気持ちいいなぁ」
ぷかぷかと浮いている雲が、梅雨時の貴重な晴れ間を泳いでいて、時折吹く風に深呼吸をする。
隣に座った尚斗さんは、早くも途中のコンビニで調達した缶ビールを開けた。
「こういう休みもいいな」
「また来ましょう!」
「いいけど、今来たばかりなのに、それ言う?」
「あはは、そうですね」
寛いでいる彼も、後ろ手をついて同じように空を見上げている。
さらりと流れた髪と、端正な横顔に見惚れていたら、不意に傍らに置いていたカンカン帽を顔にかぶされた。