秘密の恋は1年後

 翌日。
 ほとんどの社員が夏季休暇を取り終え、社内に賑やかさが戻ってきた。

 今日は、休み前に抱えていた社員の進退について面談する日だ。
 尚斗さんがアドバイスしてくれたように、きちんと話してみよう。その上で、彼に冷静に考えて決めてもらう必要がある。他社と比べるのではなく、ここでどう働いていくのかという視点をもう一度持ってほしい。


 小会議室で長机を囲み、先輩が話している。
 それは、尚斗さんが話していたことに近かった。この会社で働いていくうえで、トップの思考に共感している社員が多いことはとてもいいこと。でも、そうではない社員に無理強いするのも違うだろう。


「あくまでも、あなたが日々暮らしていくなかで、会社はそれを支え、彩り、前向きでいられる場所でなくてはならないと思っているんです」

 先輩がそう告げると、社員はゆっくりと頷いて考えを改めてみようと思うと言ってくれた。

 最終的にどうなるかは、本人が決めること。でも、退職したいと言われて、そうですかと受け入れてはならないのだ。

 不平不満、前向きな意見、悲しいことや嬉しいこと。
 いろいろな感情の受け皿になるのも、人事の仕事なのだろうと実感した。

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