秘密の恋は1年後

「ただいま」
「あ、おかえりなさーい!」

 玄関に向かった結衣さんは、あの夜と同じようにパタパタとスリッパの音を鳴らしながら、帰宅した愛斗さんを出迎えた。


「麻生さん、こんばんは」
「こんばんは。こんな時間にお邪魔してすみません」
「いいえ、お気遣いなく。妻に予定を合わせてもらって申し訳ないです。ゆっくりしていってください」

 愛斗さんは、結衣さんから私が来ると聞いていた様子だ。
 だけど、彼が早く帰ってくる夜なら、今日じゃないほうがよかったかなぁ。


「麻生さん、お食事は済まされたんですか?」
「いいえ、まだですけど……」
「それなら、一緒にどうですか?」
「せっかくですけど、ご遠慮します。お茶をいただいたらお暇しますので」
 
 お邪魔するたびにご馳走になるようで申し訳ない。それに、元から長居するつもりもなかったので、丁重に断ってから、淹れてもらったお茶を啜った。

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