秘密の恋は1年後
洗面室から出て、十畳のワンルームの一角にあるソファの上から、通勤用の合皮素材の黒いバッグを持つ。
テレビの左隅に表示されている情報番組の時計は八時前。いつもの電車に乗るには、もう家を出ないと間に合わなくなりそうで、慌ただしく玄関に向かった。
七センチヒールを履いて、歩き慣れた道を行く。駅までは徒歩十分ほど。デスクワークが多い私にとって、いい運動になっている。
社長は一緒に暮らそうと言っていたけれど、いったいいつからなんだろう。
本当にそうなれば、この道を歩いて通勤することもなくなるのかもしれない。
ホームに到着して二分ほどで、いつもの電車がホームに入ってきた。
ドア近くの吊革に掴まり、混雑する車内で手にしていた携帯でニュースをチェックしたり、友人に返事の送る。これも日々の日課だ。
いくつかの通知に紛れて、社長からのメッセージに気付いた。
【おはよう。昨日はありがとう。今日もいい一日になるといいね】
送信時間は七時半。社長が朝から爽やかなメッセージを送ってくれて、自然と口角が持ち上がった。