秘密の恋は1年後

「銀座にある、老舗和菓子店の立花って知ってる?」
「はい、もちろんです」
「この店、そこの若旦那が経営してるんだよ」

 臙脂色の暖簾の右下に【立花】の文字を見つけた。
 彼に続いて石畳の入口を通って入ると、店員がすぐに案内してくれる。

 店内は、カウンター席の背中に坪庭が設けられていて、都会の真ん中にある高層ビルとは思えない雰囲気がとても素敵。奥の方にある個室の座敷は、いくつか予約席の札が置かれていた。


「千堂さん、こんばんは。ようこそいらっしゃいました」
「お久しぶりです。どうですか、最近は」

 行きつけにしているようで、座敷に通されて座って間もなく、和装ではんなりした雰囲気の男性が挨拶に顔を出した。

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