秘密の恋は1年後

「おかげさまでなんとかやってます。今夜は素敵な方がご一緒なんですね」
「うちの社員の、麻生です」
「はじめまして、立花と申します。この店のオーナーをしております。千堂社長にはいつもご贔屓に」
「麻生と申します。よろしくお願いいたします」

 社員と紹介されて、心の端っこがチクっとした。
 〝恋人〟と紹介されると思い込んでいたのだ。散々、現実味がないと思いながらも、いつの間にか自分もそのつもりになっていたと気づいた。


 再び社長とふたりきりになり、座卓を挟んで向かい合う。


「好きなものをなんでも頼んでいいよ。酒も飲みたかったら飲んでいいし」

 彼は、立花さんが渡してくれたメニュー表を私が見やすいように、座卓に広げてくれた。

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