クールな社長の耽溺ジェラシー
「どういうことですか? それ」
高羽さんは心象悪そうに眉を寄せる。なんとか唇は弧を描いているものの、笑顔のお手本は崩れかけていた。
「小夏といると楽しいからな」
「それって私とはつまらない……って聞こえますけど」
「そうじゃない。小夏といる時間が一番楽しいってだけだ」
同じことをもう一度言い直す。
新野さんの言葉には裏も表もなくて、それしかない。だから余計に、受け入れたくない言葉は深く刺さる。
「一緒のことよ!」
寄せていた眉を吊りあげると、口元を歪ませた。
笑顔はすっかり消え去り、ヒールが折れてしまうんじゃないかと思うほど、足元に力を込めるとバーへ入っていった。
「新野さん、いいんですか!? これからお仕事の関係とか……」
心配になって、新野さんの腕を掴んで引き止めるように促すけれど、本人はいたって落ち着いていた。
「いい。元々、このビルのオーナーが宣伝頼んだだけで、レストランの紹介のときにちょっと取材されたくらいだ。俺自身はなんの関わりもない」
「そうだったんですね」
本人がそう言うなら大丈夫だろう。安心して腕から手を離した。
「いままで何回も誘われて、正直困ってたし。いい機会だった」
「それじゃ、いまの怒るってわかってて言ったんですか?」
「一応」
さらっと言ってのけると、エレベーターへ向かう。
なぁんだ……そっか、怒らせて諦めてもらうために私の名前を出したんだ。
好きだと告白されたこともあって、断る口実だと知らずに舞いあがってしまった。そんな自分が恥ずかしい。
到着したエレベーターへ乗り込むと、新野さんから少し距離を取ってうつむいた。