クールな社長の耽溺ジェラシー
「新野さん、お久しぶりです。大藤(おおふじ)アドの高羽(たかば)です」
首をかしげて微笑むと、長い髪が流れて色っぽさが漂った。
「大藤アド……ああ、広告代理店か。ここの宣伝を担当したところだったっけ」
ここの、というのはさっきまで私と新野さんが食事していたレストラン。
向こうの愛想のよさに対して新野さんの素っ気なさは本当に顔見知りかと疑いたくなるほどだ。
「そうですよ。今日はこちらにいらしたんですか? 私がお誘いしたときは興味ないっておっしゃっていたのに……」
甘えた口調で新野さんに近づきながら、こっそりと私に視線を投げてくる。値踏みされているみたいでいたたまれなくなった。
「今日だって誘ってくださればよかったのに。当日でも全然問題ありませんでしたよ?」
笑い方のお手本のようににこっと笑みを浮かべる。あからさまな新野さんへのアプローチに、私はただ目をそらした。
新野さんにはこれくらい美人で大人っぽい人が似合う。身長だって、私とではデコボコだけどこの女性なら釣り合いがとれていた。
……って、なんで急に現れた女性と自分を比べてるんだろう。
職業だって、立場だって、年齢は近そうだけど一緒のものなんてなにもないのに。
あまり人を意識してこなかったのに、いま、新野さんがそうさせている。
「俺は小夏と来たかったから」
名前が出たので隣を見上げると、優しい瞳で見下ろされていた。