クールな社長の耽溺ジェラシー


船は外観が真っ白で洗練されたものなら、中も白を基調にした気品溢れるデザインで、ところどころにあしらわれている金がさらにワンランク上の空間を作りあげていた。

乗っている人たちもとても優雅で、私だけ場違いかと気後れしたけれど、隣に立つ新野さんが堂々としていたのでその心配はすぐに吹き飛んだ。

屋上へと続くらせん階段をあがると、オーケストラが澄んだ音色を奏でている。

軽やかな音楽の中、雲ひとつない蒼天を仰ぎ見ると海と勘違いしそうなほど美しく、見下ろした本物の海は水面が陽射しを浴びて宝石を散りばめたように輝いていた。

「すごい……車の中から見るのと、全然違いますね」
「ああ」

潮風を浴びていると船が汽笛を鳴らし、ゆっくりと動きだす。それに合わせ、オーケストラの演奏は華やかで勢いのある曲に変わった。

スローモーションのように流れていく景色は時間を忘れさせてくれ、気持ちいい風が現実から切り離してくれて、そばにいる新野さんだけを感じることができた。

「あそこのビル、改修工事したんですね。前のほうが好きだったな」

流れる景色から目についた部分をピックアップすると、新野さんはどの建物のことかわかったらしく、「ああ」とうなずいた。

「前は窓が絶妙な配置だったから夜になるときれいだったな。けど、いまもいい。明るさを抑えながらもしっかりと主張してる」

決して人の作品を乏しめることはしない新野さんはまっすぐでかっこよく見えた。


< 119 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop