クールな社長の耽溺ジェラシー
「あのタワー、新野さんもライトアップに関わりましたよね。やってみてどうでしたか?」
「必死だったし、あんまり思い出したくないな」
「えっ、新野さんが?」
いつも余裕な顔をしているから、がむしゃらで頑張っている姿なんて想像できない。
「いまも結構必死だけどな」
「いまも?」
首をかしげ、隣の新野さんを見上げると肩を抱き寄せられ、頬にキスされた。
「っ、に、新野さん……!」
「誰も見てない」
たしかに乗っている人たちは景色を眺めていたり、船内で話を楽しんでいたりしているし、オーケストラは演奏に集中している。
「だからって……」
こんな大胆なことをするとは思わなかった。
耳まで火照るのを感じながらうつむくと、困ったように笑われてしまった。
「我慢してるこっちの身にもなってほしいよ」
新野さんの我慢の意味がよくわからず、頭の中でハテナマークを浮かべる。でもやっぱりわからないので考えるのはやめて、思い切って新野さんの胸板に頭を預けて甘えることにした。
「……ホント、わかってないな」
参ったとばかりに呟かれた言葉は、それでも嬉しそうだったのでそのまま景色を眺めた。
やがて海が茜色に染まるまでクルージングを楽しむと、地上に戻ってきた。
船から港が見えたときは寂しく、夢の時間が終わるのかと思ったけれど。
「飯、行くか」
「はいっ」
まだまだ夢心地は続きそうで、私は顔いっぱいに笑顔の花を咲かせてうなずいた。