クールな社長の耽溺ジェラシー
展望台へ登ると、空一面の星空を近くに感じられた。
街中の明かりはここからではかすんで見え、普段過ごしているあの場所がどこか遠くの国のように思える。
静かな中、ふたりの息遣いだけが響いて苦しくなる。
なにか喋ろうと思うのに、そう思えば思うほど焦って言葉が出てこないので、諦めて夜空をじっと見つめた。
紺色のベルベットを広げたような深い空に、数えきれないほどの星が浮かんでいる。
雪の結晶を観察しているみたいだ。微粒子のように小さな星も確認できるので、よほど空気が澄んでいて、邪魔をする明かりもないのだろう。
「きれいですね」
「ああ」
相づちだけ打つと新野さんは黙ってしまった。
無口な人だとわかっていたけど、いままで会話に困ったことはなかった。居心地も悪くないと思っていたし、いまも悪いわけじゃない。
「……考えごとをしたり、悩んでるときは照明を見ないに限るな」
「えっ、悩んでたんですか? 言ってくれたらよかったのに」
私じゃ力になれないかもしれないけれど、聞くだけならできる。というか、聞かせてほしい。
「なにを、悩んでるんですか?」
「橋のライトアップだな。絶対に正司さんに勝ちたいと思ったら欲が出て、余計なことまで考えすぎて困ってる」
だからこそ、自然の明かりだけを感じてしっかりと向き合える、こういった場所がちょうどいい。その気持ちはわかった。
「いままで、欲がなかったんですね。だから、勝ちたい……っていう気持ちに戸惑ってるんですよ」
「どうだろうな。でも、いままでで一番欲にまみれてるのはたしかだ」
自嘲気味な笑みが月明かりで艶っぽく見えた。