クールな社長の耽溺ジェラシー
「時間、まだ大丈夫か?」
「はい、平気ですよ」
和フレンチを堪能して外に出ると、秋の気配がより濃くなり、風が冷たさを帯びていた。
薄着をしていたので少しだけ肩をさすっていると新野さんが羽織っていたジャケットをかけてくれた。
「小夏にはでかすぎだな」
「身長差、いくつあると思ってるんですか。こうなりますよ」
ジャケットをぶかっとさせたまま、笑っている新野さんに膨れ面を向けた。
まさに服に着られている状態だけど、温かかったのでストールのように体の前へ手繰り寄せた。
「でも、ありがとうございます」
「あとでもう少し冷えるところに行くから、そのまま持ってたらいいよ」
車へ乗り込むと新野さんに猫みたいに頭をなでられる。
体温が一気にあがったので、ジャケットを借りるよりも効果的な暖の取り方かもしれないとバカみたいな考えが浮かんだ。
大通りを走り抜け、車は駅やオフィス街、住宅地から離れてどんどんと夜の山を登り始める。
途中に見えた湖は、きれいな空気を象徴するかのように星でいっぱいな夜空を水面に映していた。
「着いた」
ひっそりとした景色に不安さえも感じていると、たどり着いたのはギリシャの街並みを彷彿とさせる白壁の展望台だった。
駐車場に車を停めると、外へ出る。高いところだけあって、昼間よりも肌寒く感じた。
「新野さん、寒いんじゃないですか? ジャケットお返ししますよ」
借りていたジャケットを肩から取ろうとすると、首を振られた。
「いい、これくらいなら平気だから。冬の現場のほうがもっときつい」
月明かりで見えた新野さんの顔は柔らかく微笑んでいて、強がりでもなんでもなく、ただ私を気遣ってくれているとわかった。