クールな社長の耽溺ジェラシー
「送ってくれてありがとうございました」
しんと静まり返った住宅街にあるマンションの前で立ち止まり、少し手前でタクシーを降りたときからつないでいた手を離す。
街灯に照らされた新野さんは優しく笑ってくれた。
「それじゃ、ここで」
「はい、おやすみなさい」
うなずいて、手を振る。けれど、新野さんはその場から動こうとしない。
「新野さん? どうしたんですか」
「そっちこそ。小夏が部屋に入るまでが見送りなんだけど」
「過保護すぎですって、大丈夫ですよ。ほら、目の前ですから」
「かわいくしてる小夏が原因で、過保護になってるんだけどな」
「か、かわいくって……」
会った瞬間もご飯を食べているときも、肩を寄せて話をしていたバーのときだって褒めてこなかったのに、この別れ際で言ってくるのは反則だ。
離した手をもう一度つなぎ直したくてたまらない。
「心配になる」
熱っぽく見つめられると、さらに離れがたくなって私も同じくらい熱く見つめ返した。
「……それ、私が言いたいです」
新野さんがかっこよくて心配しているのはこっちなのに、全然わかっていないなんてタチが悪い。
「じゃあ……おやすみなさい」
引き止められることを少しだけ期待したけれど、背中越しに「おやすみ」と言われるだけで手を伸ばされはしなかった。
エレベーターであがって部屋の前まで来ると通路から下を眺めた。
新野さんがゆっくりと歩いて帰っている。
その姿をしばらく見つめて、いつの間にこんなに好きになったのかと自分が不思議でたまらなかった。