クールな社長の耽溺ジェラシー
≪小夏? 誰だ、三柴さんって≫
「ご、ごめん……今、前の職場の先輩に会って……あ、それじゃ待ってるね」
うしろめたいことなんてなにもないけれど、なんとなく昔の先輩に彼氏と話しているところを見られたくなくて電話を切った。
「電話中だったのにごめんな。高塔が見えたから、声かけたくなって。久しぶり」
大きな口をほころばせて、白い歯を覗かせた。数年前まで見ていた笑顔が、まだ変わらずにそこにあった。
「お久しぶりです。お元気そうですね」
三柴さんは私のふたつ上の先輩で、前の職場でよく一緒に行動していた。新人だった私に設計の基礎から叩き込んでくれたのはこの人だった。
「いいや、高塔がいなくなって元気も半減したけどな」
「それ、からかう相手がいなくなったからですよね?」
笑って返すと、三柴さんも懐かしそうに瞳を細めた。目を合わすだけで、昔の思い出が一気によみがってくる。
「そういえば、ここ……高塔が関わったんだって? すごいな。テレビでやってるの観て気になったから、去年入った新人と来てみたんだ」
うしろを振り返って指差すと、ひとりの男性がイルミネーションを眺めていた。
「ありがとうございます。なんとか頑張ってます」
「昔はよく隠れて泣いてたのに。まさかあの高塔がスーゼネでバリバリ働いてるとはなぁ……」
「な、泣いてないですよ! 全然」
前の会社では下請けの人に直接指示を出すことも多く、気性の荒い人に怒鳴られては隠れて泣くこともあった。
いまはもうちゃんと向き合えるくらい強くなっている。
「どうだか。……なぁ、高塔がよかったら俺らと一緒に回らないか? せっかくだし、俺たち男ふたりで寂しいし」
三柴さんが人好きのする笑顔で私を誘う。積もる話はあるし誘いも嬉しい。でも、私は――。