クールな社長の耽溺ジェラシー


「……ほかを当たってくれませんか」

背後から肩を抱き寄せられ、一瞬心臓が止まるかと思った。添えられた手は温かく、声も耳馴染があってホッとするのに、胸は騒がしく音を立てはじめる。

夕がいる。そばに、会いたいと思った人がいる。そのことで頭はいっぱいになった。

「え、に、新野デザインの社長……!? って、高塔……ど、どういう関係?」

最近、夕が会社のためにメディアへ出ることが増えたということもあり、同じ業界で働いている三柴さんも夕のことを知っていた。

肩を抱かれている私と真顔の夕を交互に見て、目を瞬かせている。

「い、一緒にここを設計した関係です」

嘘じゃないのに、胸の奥がチクリと痛んだ。

本当は付き合っていると言いたい。

でも夕は業界では有名な人だから、私が彼女だと知られると迷惑がかかるかもしれない。

「それは知ってるよ。そうじゃなくて、肩……」

三柴さんは小声で言うと、ちらりと私の肩に置いた夕の手を見た。

「付き合ってます」

ちょっといつもより無愛想に見える真顔で夕が答えると、三柴さんは「マジで!?」と街中に響き渡るほどの声をあげた。


< 168 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop