クールな社長の耽溺ジェラシー
新野さんの笑顔に胸の奥がじわりと温かくなる。この人、やっぱり優しいんじゃないかな。
「早く広瀬さんの配光、見たいなぁ……」
CGを見せてもらったとき、本当に歩くのが楽しくなりそうなライティングだった。
実際に見たら、打ちのめされたと気を落としたり圧倒されたと驚くよりも、きっと感動が強い。
「広瀬さんのいいところ盗まないと」
この結果を次に活かす。そう決めて言葉にすると、新野さんの動きが固まった。
「それ……どういう意味?」
「え?」
たずねてきた声が、聞いたことがないくらい冷ややかで一瞬怖くなった。
「こ、言葉のままです、いいところを盗む……という。あ、新野さんのいいところも盗みますよ」
「そういうことじゃない」
声の冷たさが増して、瞳には嫌悪に似た感情が帯びはじめる。
目を合わせていられなくなって、新野さんのお腹あたりで視線を泳がせた。
間違ったことを言ったのだろうか。
でも、正司さんに「いいものは盗め」と教えてもらって、だからいろんなものを見て、さまざまな手法を取り入れていままでやってきた。
それで成長したとも感じているのに。
「い、いいところを盗んで学んで消化して……オリジナルを作る、って間違っていますか?」
自分が間違っているとは思わないのに、実績も経験もある新野さんに否定されると急に自信がなくなってくる。
不安に胸が侵されていくのを感じながら、恐る恐る新野さんの様子をうかがうと、固くなっていた表情は安堵したようにほぐれていた。