クールな社長の耽溺ジェラシー


「そういえば新野さんが設計した商業施設、この前オープンしたみたいですね」

修正が終わったあと、ふたりで会議室を出てエレベーターが来るのを待っていた。

私がたずねると、新野さんは記憶を探るようにエレベーターの上に表示されている階数を見つめていた。

「ああ、テレビでやってたな。そっちのスタジアムはいつなんだ?」
「ほとんど同じ頃にオープンして、今は試合もやってます。照明もバッチリですよ」

エレベーターが到着すると、私は新野さんが降りる一階のボタンを押した。

「見送りはいい」

そう言って、新野さんが素早く設計部があるフロアの階を押す。小さくお礼を言うと話を続けた。

「スタジアムの照明設計は正司さんだよな」

壁に背を預けた新野さんはエレベーターの照明を見上げながら呟いたが、なんの変哲もない明かりは面白くなかったのか、すぐに視線を目の前のドアへ向けた。

「そう、ですけど……それがどうかしましたか?」

新野さんから正司さんの話をするのは珍しくて、ちょっと驚いてしまった。

まさか正司さんの設計をけなすんじゃないだろうかと身構えてしまう。

「いや、緻密に計算するの得意だし、向いているといえば向いてるか……って思っただけだ」

褒めた? 正司さんのことを褒めた!?


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