クールな社長の耽溺ジェラシー
ちらりと見た新野さんは嘘を言っているわけではなさそうだった。なんだ、結局のところ正司さんのすごさを認めているんだ。
……なんだ、そうなんだ!
「そうなんです、ホントあの数字を設計に活かせるのがすごいんです! 今回はスタジアムですけど、自然光が入る場所では斬新な取り入れ方をすることもあって……」
尊敬してやまない正司さんのことならいくらでも語れる。
熱を込めていたものの、新野さんと目が合った瞬間、口を閉じた。
「あっ、す、すみません……」
なんだろう、新野さんの前であまり正司さんのことを話すのが気まずい。
新野さんが正司さんのことをよく思っていないからか。それとも――。
「小夏は正司さんのことが好きなのか?」
「す、好き!?」
正司さんへの崇拝ぶりを知っている広瀬さんでさえたずねてこなかった質問に、ぎょっと目を見開いてしまう。
「違っ……憧れみたいなものです。目標といいますか……正司さんがデザインした美術館の照明に惹かれて、この道を志したので」
「美術館……?」
新野さんの顔が急に険しくなる。その顔は、私を抱き締める前の表情と似ていて、機嫌を損ねてしまったのかと焦った。
「もちろん、新野さんのデザインも好きですよ。いろんな設計を見させてもらいました。あ、さっき話していた商業施設もひと目見たとき、動けなくなるほど見惚れたんです。できれば建設中から見たかったな」
どんなデザインが描かれていて、防音シートの向こう側でどんな設計が組まれて、どんな風に施工されていったのか、できることなら見てみたかった。
「あの商業施設は無理だけど、ほかの建物ならいま建設中のものがある。一緒に見に行くか?」
「えっ、いいんですか!?」
ただの願望で、見られると思っていなかった。