クールな社長の耽溺ジェラシー


デザインが好きだと言ったからここまでしてくれるのだろうか。

まだ仕事が山積みになっている広瀬さんに

「いいなー、俺も新野さんの建物見たいー、飯食いながら設計の話したいぃー!」

なんてうらやましがられながらオフィスを出ると、新野さんと待ち合わせしていた和食屋へやって来た。

飲み屋街が多い駅前から十分ほど歩いたところにあるお店で、看板が店名だけが小さな文字で書かれた控えめなものなら、店内も薄暗く、店員ももの静か。

居心地のいい知る人ぞ知るといった佇まいだった。

「きれいなコファー照明ですね。ここの照明も新野さんが担当したんですか?」

アイボリーの優しい色合いの天井を掘りあげて光源を設置し、その反射を利用して間接的に柔らかな明かりが降り注ぐ設計。

薄暗いようでいて手元は見えるし、食べ物の艶もしっかり表現されていておいしそうに見えるので充分な明るさだ。

「俺は担当してない。前に来たときにいい店だと思ったから、ここにしただけだ。雰囲気もいいし、料理もうまい」

ほどよいライトのせいか、頬をゆるめた新野さんがすごく優しく見えた。


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